□ 合法ドラッグ 2
あんな人だとは思わなかった。
清純な人間だと思っていたのに――、
一服もって人の上に乗るなんて。
油断してあっさり薬にのまれたが、あんな人だとは思わなかった。
「やられたのか」
髭の男が面白そうに聞いてくる。
質問の意図が一瞬つかめなかったが、男役女役についてだ。
隣で、艶やかな黒髪の女が呆れたように首を振った。
「いんや」
カカシはため息をついた。
その点に関しては無傷だ。
穴ほられなかったのは――本当に幸運だった。
「‥‥しかしなあ、あのイルカがそこまで煮詰まるとは‥」
髭男は尚もおかしそうに呟いた。ひくひく引き攣る頬にカカシは憤慨する。
「お前ね、もっとオレに同情してよ。襲われたのよ?」
「――馬鹿馬鹿しい」
紅い目の女が吐き捨てた。
「どう考えてもあんたがおかしいわ、カカシ。そのつもりも無いのに、どうして恋人同士だなんて公言してたのよ」
「いやぁ、オレは恋人のつもりだったんだけど」
カカシはソファに脱力した。
「まさか、イルカ先生があんなにふしだらだったなんてね〜」
真剣に落ち込んでぼやく同僚を、
相談相手の上忍たちは異様なものを見るように眺めた。
最初の家出の晩、イルカは和解をしに戻ってきた。
捨てられたと落ち込んでいたカカシは両手を広げて迎え入れ、一服もられたことに気付かなかった。
初めての性行為から、イルカは再びカカシの家に住むようになったが、二人の関係はぎくしゃくしていた。
相変わらずベットは別だが、夜になると状況は変わる。
イルカはたまに、カカシのペットへもぐりこんできた。
「‥え、やるの?」
カカシがひきつった顔で尻込みすると、腹にまたがったイルカが、
「やるに決まってるでしょ」
と不遜に断言する。
さすがにもう薬は持ち出さないが、身体的には健康体であるため、きわどい場所を這うイルカの手にむずむずする。
カカシはため息をついて天井を見上げた。ベットに仰向けになった姿はただのまぐろ。
いつまでたっても協力的でないカカシに、
「――やるんですか、やらないんですか」
イルカの苛立った声が追い討ちをかける。
「‥‥‥やります」
できれば寝たいし、やりたくないけれど。
目が覚めた欲を持て余し、カカシは結局イルカのいいようにされる。
腰を浮かせて慎重にカカシの熱を中心に埋め込んでいくイルカは、頼りなげに眉を寄せて唇を噛み締めていた。その姿をぼんやり眺め、
(‥‥ほんと下手だなぁ、この人)
やってもらって何だが、イルカは舐めるのも拙く、入れるのも手間取り、なかなか最後までいかない。
自分はいいが、イルカはとても快楽を得ているとは思えない。
そこまでして自分と抱きあいたかったイルカの気持ちをいじらしいと思うが、手を貸してやろうとは思わなかった。
(だって、汚されちゃった)
理想だったのに。
無垢な笑顔がまぶしい、心優しいイルカ。そんなイルカが好きで、手に入れた。
汚さないように大事にしてきたのに、イルカは自ら台無しにした。
(オレのイルカ先生が、汚されちゃった)
辛い表情で腰を蠢かすイルカは夜目にもはっきり見えるが、いつも輝く笑顔があった顔はうっすら影がかかって見える。
――嫌だなぁ。
心の底から思ったら、
「淫乱」
ぽろり、と本音が出た。
闇の中で、イルカの顔がはっきりと強張る。
泣くかな、と思ったが、合わさった瞳は滾るように燃えていた。
「‥殺されたいんですか」
本気の目に手を上げて降参した。
その後も、へたくそで虚しい絡み合い。
結局自分だけ最後までいって、イルカは浴室へと消えた。その中で何をしているのか。
カカシは考えるだけで気持ち悪かった。
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