■ 男ですから









「ねえ、カカシさん。あなたどうして浮気するんですか」
「‥‥あ〜」
 食後、のんびり本を読んでいたカカシは少し気まずそうな声を上げた。
「ばれてました? いや、すみません」
「謝罪は別にいいんです。ただ、どうして他の人も必要なんですか」
「そりゃあアンタ、やっぱり女の体も抱きたいじゃない」
「‥なるほど。やわらかい体がいいんですね」
「まあ、男ですから。えーと‥‥怒ってます?」
「怒ってませんよ」
 イルカはお茶をすすりながら落ち着いて答えた。
「俺も男ですから分かります。それに、俺も浮気してますから」
「え」
 カカシの声が少し高くなる。
「お互い男ですから。浮気も仕方がないですね。わりきっていきましょう」
「‥はあ、そうですね」
「お茶、飲みますか。あったかいの入れますよ」 
「あ、お願いします」
 立ち上がったイルカは台所へと消えた。
 カカシは再び本を読み始め、やがて温かいお茶が運ばれてくる。
 互いに湯のみを手に取り、のんびりした空気が流れていたが、
「相手って誰です?」
 カカシがふいに問いかけた。
 イルカは手元の雑誌をぺらぺら捲りながら、
「誰って‥そういう質問は不粋ですよ。面倒はごめんです」
「まあそうですけど、純朴なイルカ先生が浮気なんてちょっと意外だったんで」
「俺は不能じゃないですから」
「それは知ってますけど、他の男の具合はどうだったかなぁと」
「どうして男と決め付けるんです? 相手はれっきとした女性ですよ」
「へぇ、やりますね」
「‥ああ、でも男もいたかな」
「は?」
「はたけカカシが囲ってる男の味を試したいとかって、よく上忍から声がかかるんですよ」
「‥‥‥それでどうしてるんですか」
「やりますけど」
「初耳ですよ」
「はじめて話しますから」
「オレを怒らせようとしてますか?」
「さあ」
 苛立ちが胸にこみあげてきた。カカシはため息をこぼす。
「‥‥本当はぜんぶ嘘でしょ? アンタはそういうタイプじゃない」
「分かった風な口はやめてくださいって」
「い〜や、アンタはオレだけのはずです。オレ以外の人間がアンタを満足させられるもんか」
「だまれ、エロオヤジ」
「ひとつしか歳違わないでしょ」
「‥黙って」
 声が途切れ、唇が深く合わさった。
 覆い被さるイルカの腰に手を回して、カカシは口づけに応える。
 髪の毛をまさぐると、イルカの腕が首にすがりついた。
「イルカ先生、ごめんよ。アンタは悲しんでたんだね」
 訊ねても答えはない。
 抱きついてくる体に触れるのは、考えてみれば久しぶりで。
 少し華奢になったような背に、愛しさが胸にあふれた。
「やっぱりアンタが一番可愛い」 
 本音で言ったつもりだが、手酷く耳に噛みつかれた。
 滲んだ血に――しばらくは謹慎しよう――と心に決めた。











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