□ タイトルはない 1










 無造作に縛った黒髪。
 およそ手入れなどしたことがないように、見るからに固そうだ。
 触っても、きっと痛い感触だけだろう。
 
 真っ直ぐな瞳。
 実直な眼差しは、腹黒い人間を怯ませ、時に押し付けがましい。
 信じていると、言葉にせずとも伝わってくる黒瞳。

 似ていたのはこの二つ。
 第三者が見れば、似ても似つかないと吐き捨てるだろうが、オレには分かる。
 長く焦がれすぎて、おかしくなったのかも知れないが、

「‥イルカ先生って、オレの昔の女に似てるんですよねぇ」

「は?」 

 警戒に満ちた目が驚いたように、やっとこっちを向いた。
 一人で酒を飲んでる席に、むりやり入り込んだ。
 あまり親しくない上忍が馴れ馴れしく隣に座り、まじまじと顔を眺められれば、平和ボケしたアカデミー教師も危険を察知するだろう。
 なんたってオレだし。

「いや、その女と別れたわけじゃないんですけど、ちょっと放浪癖があって。外部情報を集める任務にあちこち飛び回ってるんですよ。里には滅多に戻ってこない仕事一筋のくの一なんです」

「‥はぁ」

「まあ、イルカ先生も噂は聞いてると思いますが、オレは女癖悪いです。ついでに生活態度も。でも、その女は特別なんです。本気で惚れちゃった女なんですよ」

 再度、はぁと気のない返事を返すイルカに、オレは笑った。
 酒の効果で、ほんのり赤くなった首元のなんていやらしいことか。

「でも、相手は仕事一筋で構ってくれなくてね〜、オレはもー寂しくて寂しくて。だから色々女あさってるんですけど―――それも今夜限りでやめます」

 言いながら、口布を少しずらした。
 布越しではなく、動く唇を見せ付けたかった。

「だから、イルカ先生。その女の代わりして?」










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2003.03.20

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