□ タイトルはない 3










 非常識な関係だと、自覚はしている。
 男に、しかもあんな生真面目な人間に、女の代わりをしろと要求する自分は相当不道徳だ。
 しかし、今更性格を変えるのは無理な話だ。
 飢えた自分の前に、のこのこ現れたあの男が悪い。
 あの女と同じ髪と目をした、イルカが悪い。

 だが、相手が男だと言う事で、少々手加減を忘れたらしい。
 忍の身体だから平気だろうと思っていたが、ある日、イルカが疲労のために倒れた。
 その話を聞いて、今夜は駄目か、と茫洋と考えたが、

「‥‥‥‥‥‥」

 考え直した。



 


「‥なんでいるんですか」

 ベットから、擦れた声が可愛くない言葉を言う。
 任務を切り上げて見舞いに来た情人に対して、なんて口の聞き方をするのか。
 眠っていたので勝手に入り、散らかった部屋を片付けた。
 やることが無くなったので、イルカの寝顔を眺めていたらこの言葉。
 帰ろうかと思ったが、赤い顔に気付いて手を伸ばす。
 額が熱い。

「熱がありますね」

 平気です、と説得力のない声を無視して、薬を探す。
 何か食べた方がいいだろうと勝手に台所をつついた。
 食欲はなさそうだが、スープくらいは飲めるだろう。
 わりと上手く出来上がったが、

「どうぞ?」

 スープ皿を持ったまま、イルカは動かない。
 医者呼んだ方がいいかな、と考えていると、ぽたり、とスープに雫が落ちた。

 ――――あれま、泣いちゃったよ。

 事の最中に痛がって泣くことはあったが、素面の涙は初めてだ。
 スープに感動した、なんて単純な話なら問題ないが。
 さて、どうしようか。
 適切な対応が思いつかず、頭を捻って考える。
 すると、

「―――優しくしないでください」

 擦れた声で、決然と言い切った。
 
 ‥‥‥めそめそ泣きながら、何言ってんだか。

 浮かんでくる笑みを隠せない。
 ただあの女に似てる、というだけでなく、この人は面白かった。
 分かってないね、イルカ先生。
 そう言われると、ますます優しくしたくなる。

 性分に従い、イルカの唇に舌を伸ばした。
 最近やっと諦めを知った唇は、簡単にオレの侵入を許す。

「ね、食べて?」

 優しくする度にこぼれる涙に、オレは心底酔いしれた。










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2003.03.21

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