□ タイトルはない 4










 カカシは滑稽な男だ。
 同性に女の影を求める一途で、歪んだ男。

「イルカ先生、明日は外に食いに行きましょう。たまには酒でも」

 おごりますから、と気さくに話し掛けてくるカカシの声。
 食器を洗っていると、行儀よく自分の食べた分を持って手伝いにやってくる。
 カチャカチャと、水をふき取って手馴れた動作で棚へ片付けていく姿に、
 いつからだろう。
 違和感を感じなくなってしまったのは。

 カカシとの異常な関係が始まって、半年。
 あれほど俺を苦しめた毒は、いつの間にか空気に変わってしまった。
 気がつくと傍にいる男。
 最初からそこに住んでいたように、ごろごろ寛いで、無防備に眠って、当然のように甘えてくる。
 非常識な男。
 それでも、暴虐なままの性格でいてくれれば―――楽だったのに。

 カカシはいまでも好き勝手に行動する。
 でも、時々思い出したように、優しい言葉を吐くようになった。
 それが、酷く苛立たしい。
 

 ―――人の心に、土足で踏み込んだくせに。


 気付かなかったけれど、
 カカシという毒は、とても甘い蜜の味だった。
 
 もう手遅れだと、自分でも分かっている。
 匂いをもたない忍なのに、俺の身体からはあの人の匂いがする。
 消毒液の海に飛び込んでも、
 この匂いは消せない。

 カカシは、滑稽で哀れな男だ。
 でも、
 一番愚かなのは―――――自分だ。



「実はですね、イルカ先生」

 翌日の、約束の一杯の席でカカシは言った。

「近いうち、アイツが戻ってくるんです」

 杯を持って、上機嫌な笑みを浮かべて。



「だから、アンタと別れようと思います」









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2003.03.21

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