□ タイトルはない 7










 長く焦がれた愛する女。
 数年ぶりにこの腕に戻ってきたというのに、あと一週間でまた出発すると言う。
 言い出したら聞かない。
 戦場で死ぬのが似合いだと自分で言う女だ。
 残されるオレは、また一人ぼっち。虚しく女漁りをして自分を慰めるしかない。
 いつもならこれ以上にないほど駄々をこねる。
 だが、今回は違う。
 そうだそうだ。
 イルカ先生がいた。




「アホ」



 心底軽蔑した顔で、見たこともない冷たい目でイルカが言った。
 女が出発する前夜、
 久しぶりにイルカと向き合った。
 一ヶ月ぶりか。手を伸ばせば届く距離を意識する。

 もう一度、女の代わりをして欲しい。

 その内容は、どう切り出そうとかっこ悪いことには変わりない。
 だから、単刀直入にヨリを戻そうと伝えると「アホ」と切り捨てられた。
  
 長く聞かなかった罵倒だ。
 火影になら何度か言われたが、まさかイルカの口から出ようとは。

「あ〜‥やっぱ駄目ですかね。でもアイツ、明日出発するんですよ。オレも我慢を強いられてうんざ‥‥り‥っ」

 いきなり拳が飛んできた。
 避けると場がこじれそうなので、わざと受けたが―――強烈。

「いたた」

 手加減のないイルカの拳に、顎が熱を持つ。
 どの言葉がイルカの逆鱗に触れたのだろう。
 うんざり?
 我慢?
 
「くだらんこと言わんでください。――さっさと帰れ」

 ぴしゃりと、口を挟む隙も与えない冷徹な声音。
 イルカは、本気で怒り、嘲っていた。

 あー、やばい。
 
 背を向け、何の未練もなく去っていく背の動きを見詰め、
 カカシは血の滲んだ唇をゆがめた。

 やばいね、ぞくぞくする。

 あんな火のような顔も隠してたんだ。


 刃物とか取り出さないかな。




 突き刺されたりしたら―――オレ、イっちゃうかも。










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2003.03.21

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