□ タイトルはない 8
「ねえ、蓮華。オレ、もう一人欲しい人ができちゃった」
イルカと別れ、自宅に戻ったオレは隠さず白状した。
出発の準備をしていた女は首を傾げ、
「別れるってこと? 別にいいよ」
相変わらず冷たいことを言う。
違う違うと、手を振った。
「オレはお前も欲しいの。でも、あっちも欲しいの。両方欲しいんだけど、そういうの駄目かね」
「はっきり二股って言えば?」
女は呆れ顔で言った。
「あたしは、そういうのは嫌いだな。愛を分けるくらいなら、別れてちょうだいよ」
「やだ」
「どっちと別れるのが? ‥‥‥あー、じゃあとっておきの問題」
荷物を背に担ぎ、女は人差し指を立てた。
「あたしとその相手の人間が、崖にぶらさがって今にも落ちそう。さて、あなたはどっちを助ける?」
唐突な問題に、カカシは少し目を剥いた。
一人しか駄目? と聞くと、重く頷かれた。
その答えが、あなたの本当の気持ちだと言い残し、夜明けを待たずに彼女は出発してしまう。
見送りはけっこう、と、最後までクールに。
華の香りを残して、彼女は旅立ってしまった。
残されたのは、畜生の男と―――究極の選択問題。
さて、オレはいったいどっちを助ける?
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2003.03.21