001:クレヨン
もし何色にも染まっていない人間がいたとする。
そして、自分の手には十二色のクレヨン。
さて、
何色に塗りつぶしてやろうか。
うみのイルカは分かりやすい男だ。
誰もに好かれる、木の葉の里を象徴するような慈悲強い、包容力たっぷりな男。
だが生憎、女が好む顔じゃないので、そっち系はさっぱりだろう。
それなりに優秀なようで、すぐに剥き出しにする感情。
見ていて非常に危なっかしく、間違っても戦場で共に立ちたいとは思わない。
存在すら苛々すると言ったら、オレは誰かから非難を受けるかな?
だが、その分かりやすい性格が駄目だと否定しているわけじゃない。
ただ、オレが嫌いなだけだ。
色を持たないあの男が、鬱陶しいだけだ。
例えば赤。
オレは、誰に聞いても、聞かずとも「あなたは赤だ」とほざかれる。
まあ、嫌いじゃない。
戦火に紅く焼けた空に、長くこの身を染めてきた。
時には、脈を流れる赤い血で。
色彩なんて特にどうでもいい話だが、
人間を色で分ける癖がついた。
あいつは黒。あいつは青。
単純な色ばかりだが、人間を分けて認識するのに役立った。
だが、あの男には色がない。
何色にも染まっていない――ガキと同じだ。
道に這いつくばって、イタズラ描きをする子供を見て思う。
ああ、
もしこの手にクレヨンでもあれば、
今すぐあの男を押さえつけて塗りつぶしてやるのに。
オレの色に。
そんなことを試してみたいと思うオレは、やはり非難を受けるかな?
○ BACK ○
2003.03.23
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