004:マルボロ









 白い雲が鼻の先をくすぐる。
 時に強い風に吹かれて、顔にかかる。わざとだろうか。

「お前、あいつに目ぇつけられてるぞ」

 ふぃーと髭に囲まれた口から吹き出る苦い匂い。
 人の煙草の匂いは嫌いだが、行儀良く黙っていた。
 食堂にて休憩中、突然現れた大柄な上忍は、どうやら俺に忠告しに来てくれたらしい。
 話題の中心は――はたけカカシ。

「あんまり目立たないようにしねぇと、頭からばりばり食われるぞ」

 忠告の意味は掴みかねるが、要するに上忍には逆らうなということだ。
 そんなことを言っても、あの男は子供たちを任せるにはあまりに不真面目で信頼に欠ける男だ。
 さて、なんて言ってお引取り願おうかと考えていると、
 隣の椅子を思い切り蹴り飛ばされた。
 食堂に響きわたる音に、その場にいた全員がしん、と静まり返る。

「なんだ? その態度は。ちゃんと聞けよ、中忍」

 話半分で聞いていたのが気に障ったのか、ドスの効いた声で脅された。
 隠しもしない上忍の威圧。
 関係ない周囲の人間まで青ざめる中、俺はため息をついた。
 理由のない殺意をぶつけられるのは、あの男で免疫がついている。

「申し訳ありません。以後、気をつけます」

 ご忠告に関しても、ありがたくお受けしますと、髭男と向き合って頭を下げた。
 要するに、こういうことだろう?


「―――ま、そういうことだ」


 髭男はにっと笑い、自分の蹴り飛ばした椅子を元通りにした。
 やっと納得してくれたらしい。

 騒ぎが静まってほっとしたが、

 男はさらに付け足した。

「だが、その嘘のつけない目はまずい。―――謝る気がないなら、謝るなよ。あいつにつけこまれるぞ」
 

 ひやりとした。

 どうやら、その他の冷やかしではなく、本当に忠告しに来てくれた人間のようだ。
 名は確か、十班担当の猿飛アスマ。
 
 立ち去る後ろ姿に、ありがとうございます、と慌てて言うと、
 軽く手を上げて応えた。



 意外だ。
 あの男にも、あんな友人がいるのか。










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2003.03.24

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