007:毀れた弓









「イルカ先生って、オレのこと嫌いですか」

 
 他の人間には熱い感情を見せるくせに、オレに対しては道端の石コロを見るように淡白。
 イルカはどう思ってるのか聞いたみたら、

「――嫌いです」

 はい。案の定、肯定されました。




 子供をネタに何とか釣ってるが、例のいらない横やりを入れたのがアスマだと分かった。
 オレの話は無視で、アスマの話なら聞き入れる態度が少し癇に障る。
 どうしてそうオレを危険視するかね。
 オレはただ面白いイルカ先生と少し親しくなりたいだけなのに。
 そう。友人にね。
 

 最近のオレときたら、完璧なるストーカーだ。
 常に追われる側の人間だったのに、世の中おかしなもんだ。
 



 その日も、
 あいた午後の時間を、イルカウォッチングで潰していた。
 大樹に寝そべり、
 野外で弓の扱いを教えるイルカを眺め、
 よく笑い、よく怒る顔をじっと見入る。
 もっと近くで見たいが、
 さて、いったいどうしたらいいものか。

 あれ?

 イルカの掴んだ弓に、カカシは目を細めた。
 小さな亀裂が入っている。
 あれでは、方向がずれる。
 授業に使う弓はあらかじめ点検されているはずなのに。
 子供たちの質問攻めに、イルカは亀裂に気づかない。
 その弓を構え、的を狙うイルカに、カカシは考えた。
 
 イルカの放つ矢は、どこに飛んでいくだろう。

 的には絶対に当たらない。
 下手をすれば、見学の子供たちにそれるかも。


 矢が、放たれた。
 流星のように、疾風のようにぐんぐん伸びて、

 大きく逸れた。

 毀れた弓が放った矢は、子供たちに。



 ――――刺さっちゃおう。




「――――あいた」


 鈍い音。
 周囲に悲鳴が上がる。
 カカシの肩から生えた矢に、子供たちは大騒ぎだ。
 痛い。
 急所は避けたつもりだが、上忍だって痛いものは痛い。
 だが、


「‥大丈夫ですか‥‥!」


 矢は、わざと止めなかった。


 オレって変態だね。


 真っ青になって走ってくるイルカの足音に、カカシは満足そうに笑った。
 そう。
 怪我なんてさせちゃ、もう石コロのような扱いはできませんよね。
 イルカ先生。










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2003.03.29

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