010:トランキライザー









 あの男について、真面目に考えてみようと思った。
 関わりあいにならないように避けてきたけれど、もう無理だ。
 カカシはすっかりその気で、俺が折れるまでしつこくまとわりつくだろう。

 ああ、
 なんでこんなことになったのかな。





 最近、小さなミスが多くなった。
 鬱から来る睡眠不足のせいだ。
 カカシのキズも完治し、世話係りから解放されたとはいえ、あの男は相変わらず接触してくる。
 そんなに、この無骨な体と交わりたいか。
 同性だから――というのは、特に問題ではない。
 無論、好むわけではないが、そうではなく、あの男と交わるのが嫌なのだ。
 深入りすれば、
 きっと出られなくなる。

 ざらざらと、掌の上で鳴る音が―――なんて耳障りな。

 薬なんか嫌いだ。
 





「イルカ先生、これなんの薬」

 諸悪の根源がビンを見つけた。―――隠していたのに。
 黙ってると、勝手に中身を取り出して口に放り込んだ。
 ばりばりと歯で噛み砕き、カカシは嫌な顔をした。

「精神安定剤じゃない。アンタ、こんなの飲んでるんですか」

 つまんないですね、とカカシが机に頬杖をつく。
 真夜中の受付業務なんて、引き受けるんじゃなかった。

 そんな薬に頼るのも、全部あんたのせいだろう。
 分かってるくせに、よくもそんなしたり顔で。

「こんなの飲むなら、オレの飲んでよ」


 俗物的な生き物。
 鮮烈で、不可解な、酸のような男。

 これでも必死に考えましたよ。
 でも、考えれば考えるほど―――俺の体の中が蝕まれていく。
 どうして俺なんです。
 どうして、あんたなんですか。

 いったいどうしたら、


 俺の前から、消えてくれますか。










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2003.04.02

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