011:柔らかい殻
「消えてくれとは、ずいぶんな言い草ですね」
「撤回はしません。もう俺に関わらないで下さい」
「いい覚悟です。でも、そういう態度に出られると、オレもなりふりかまいませんよ」
「‥‥‥どうして、俺なんですか」
「アンタがそこにいたから」
「理由になってません」
「色のないアンタを、オレの色で塗りつぶしてやろうと思ったんですよ」
「‥‥‥意味は分かりませんが、もう十分でしょう」
「いえいえ。もう一息なんです」
深夜の受付に、不思議と他に人影はない。
互いの間にあるのは机だけ。
こんなものすぐに飛び越えられる。
餌の匂いにつられてここまで来て儲けた。
イルカの真剣な顔が笑える。
この人、とうとう戦うことを決めたらしいね。
「カカシ先生は、何がしたいんですか」
「とりあえず、アンタと寝てみたいです。キモチいいことをね。共用してみたいんです」
「どうして、したいんですか」
「‥交わってみたいんですよ。それでアンタがどうなるか見たい」
「見て、その後は、どうするんですか」
「さあ、それはやってみないことには。その後の自分が不安ですか?」
「知らないふりはやめてください」
「そうですね。‥‥‥でもイルカ先生。今日は、ずいぶんとオレに興味を持ってくれるんですね」
「‥‥‥‥‥‥」
「――――オレを理解してみたい?」
黒瞳の中で、ゆらりと光が揺れた。
なんて正直者。
馬鹿がつくほど、真面目すぎる。
他人を理解するなんて、できるはずがないでしょ。
アンタは勇敢すぎて困る。
憐れみなんて慣れてないけど、
初めて世界へ踏み出すアンタへ
目隠しの嘘ぐらいついてあげたくなる。
「いいよ。アンタなら入り込んできても。受け入れてあげる」
安穏とした世界に守られてきた人。
そんな殻はね、すぐに破けるもんなんだよ。
ほら、認めて出てきなよ。
アンタの知らない世界を存分に見せてやるから。
「オレと寝てみる?」
沈黙は了解。
笑みが押さえきれない。
声を上げて笑いたいくらいだ。
ああ、
やっとオレのところに来たね。
○ BACK ○
2003.04.02
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