014:ビデオショップ









 アカデミーの帰り、ビデオショップの前で立ち止まった。
 そういえば、しばらく立ち寄っていない。
 その手の本を買い込んでも、家には子供たちが遊びに来ることがあるので置いておけない。
 そうすると、返却できて低金額のビデオが一番便利だが、

(‥‥‥気持ち悪い)

 戸口から見えた成人指定のビデオパッケージに、イルカは目を背けた。
 

 性欲と無縁の人間とは言わない。
 恋人こそいなかったが、健全な成人男性だ。
 だが今は―――自分が酷く穢れた人間に思える。


 あれ以来、頻繁に接触するカカシは、その度に伽を迫ってくる。
 彼の中に、自分から踏み込んでしまった手前、もう断る理由も見つからない。
 あの男は嫌だ。
 抱かれると、いつだって吐きそうになるのに、やめてくれない。


 女の裸を見ても、沸きあがってくるのは嘔吐感。
 唯一、子供たちのそばにいる時だけ、昔の自分でいられるけれど、

 でも考える。

 本当は、昔の自分なんてない。
 今、ここにいる異常者が自分なのだ。

(‥‥‥この道を通るのはやめよう) 

 そんな自分を認識するのは辛い。


 ついでに、
 人間もやめたいもんだ。










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2003.04.12

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