015:ニューロン









「イルカせんせい。にゅーろんってなあに?」


 アカデミーの新入生が、可愛らしい声で言った。
 それは専門外だと、とても言えない。


「精神機能を営む構造体のことだよ」

 真面目に説明したが、新入生は大きく首を傾げた。
 理解に苦しむと、いわずとも分かる表情に苦笑がもれる。

「せいしんって、こころのこと? じゃあ、こころの形?」

 イルカは困った。そんなに詳しく説明できるほど知識の多い分野ではない。
 医療担当の先生を紹介しようかと思ったが、

(‥‥‥心の形か)

 子供なりの解釈が、なぜかとても気に入った。






 ぱたぱたと元気良く、紹介した教師の元へ走っていく子供を見送り、
 イルカは大きなため息をついた。
 
 心の形。―――それが見えたら、どんなにいいか。

 もしも見えるなら、なによりもあの理解できない男に会いに行こう。
 どれほど歪な形をしているか。
 ぜひこの目で見てやりたい。
 そんな自分の考えに、

「――――‥‥‥」

 イルカは少し血の気を引いた。
 
 見れるということは、見られるということだ。
 どうして、自分の心が歪でないと言い切れる。
 それに、
 あの男の心を見て、何をしたいと思った。


 ―――嘲ってやりたい。


 それは、紛れもない本心の叫びで――――血の気が引いた。





 もし、心の形があるのなら―――、
 断言してもいい。

 俺の心が一番、歪だろう。










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2003.04.12
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