018:ハーモニカ









 イルカの精神は相当限界に近い。
 ちょっかいを控えた方がいいとは思うが、面白いのでやめられない。
 元々それが目的で近づいたんだしねぇ。
 危なくなったら、その時はその時。
 それよりも、
 果てに立った時のあの人の顔を考えると、ぞくぞくするね。

 限界は近い。
 だから、任務までの間、めいっぱい遊ぼう。







 決定した任務の日時を告げるために、アカデミーへ足を運んだ。
 今日も追い詰められたイルカの顔を楽しみに来たが、

「?」

 ふいに、どこからか下手くそな音が流れてきた。
 耳が痛いな、と眉を顰める。
 廊下から下を覗くと、庭で子供がハーモニカを吹いていた。
 初心者か、聞くに堪えないありえないメロディ。
 さっさと連れて帰ろうと、イルカのいる教室を覗くと――――、

(‥‥‥)

 イルカは窓辺の席に座っていた。
 こちらの気配には気付かない。
 ぼんやりとした視線は、庭の子供を見ているようだ。

 下手なハーモニカを必死に吹く子供を眺めて、イルカは優しく笑っていた。
 一度も見たことのない――穏やかな顔。
 あたたかな日差しが体を包み、触れると壊れてしまうような、
 儚いほど清浄な空気がそこに。


 ―――そんな顔も悪くない。


 けど、オレには見せてくれないんだろうねぇ。

 だってオレ、
 アンタのこと、やっぱりどうしても嫌いだから。
 優しい真似なんて出来ないんですよ。


 そういうの、嘘くさいでしょ?
 





 まあ、せめて――、

 今日ぐらいは大人しく帰りますよ。










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2003.04.12

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