023:パステルエナメル









 カカシへの糸口は、象牙色の小刀だった。
 値段などつけられない破格の小刀を記憶していたのは上忍仲間。それは、以前カカシが持っていたもの。
 売人の口は堅く、流出元を探し出すことは困難だったが、それが楼閣であることが判明した。
 報告を受けたイルカは、捜索班に直訴した。――自分に行かせて欲しいと。
 カカシとの複雑かつ奇異な関係は、上忍たちのほとんどが知るところだった。
 イルカの身を案じる声もあったが、結局は、アスマが了解を出した。



 楼閣へ足を踏み入れ、一番奥の部屋へ案内されたイルカは呆然とした。
「‥‥‥‥‥なにやってるんですか」
 そこに、やっとカカシの姿を発見したけれど――――なんて有様。
「や、イルカ先生。遠い所をわざわざど〜も」
 だらしなくはだけた浴衣。えらそうに座って女に囲まれて。しかも、部屋に充満するこの匂いは――麻薬。
 アホだ。
 絵に描いたような堕落ぶりに、眩暈がする。
「薬の持込は禁止されてるんじゃないんですか」
「たしなみ程度ですよ。オレ、あまり効かない体質ですし」
「それでも、一緒にいる人たちには悪影響です」
 イルカは他の遊女たちに退室を願った。
 横を通り過ぎていく女性に一言声をかけ、外に出るのを確認すると、
 ―――ぱしっと、風を切る速さでカカシの頬を叩いた。
「あいた〜‥暴力反対ですよ」
「皆さんに迷惑をかけた罰と、この間、置いてったお返しです」
「休暇期限はちゃんと覚えてますよ。あと一ヶ月もすりゃ帰りますから」
「ええ。もちろん帰ってもらいますよ。明日にでもすぐ。―――あなたの帰りを待ってる子供たちがいるんです。こんな所で腐ってちゃ困ります」
 襖が開き、再び現れた女から、イルカは水差しや布を受け取った。

「明日、出発するまでに、薬は全部抜いてもらいますよ」










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2003.05.06

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