024:ガムテープ









 ぐるぐると、器用にイルカの手がガムテープを巻く。オレの手に。
 こんなにしなくても、別に逃げないし、暴れたりしないのに。
 はっきり言ってすぐに破けるが、拘束される自分が面白かったので好きなようにさせた。
 しかし予想外だった。
 てっきりアスマ辺りが乗り込んでくるかと思ったが、‥‥いや、ちょっとはこの人が来るような気もしてたか。
 イルカはてきぱきと怪しい薬を片付け、部屋の換気に勤しんでいる。
 皿の水の上で火を起こし、新しい香を焚く。覚醒の香だ。
 鼻腔をくすぐる夜明けの爽やかな匂いに、カカシは眩暈を感じた。
 癒しが毒に感じる。少しハメを外しすぎたかね?
 きつく縛られ過ぎて、指先がぴりぴりする。
 そういえば喉も乾いてきた。
「イルカ先生、喉乾いた。お酒ちょうだい」
「水しかありません」
「手、使えないから飲ませて?」 
 縛られた手を突き出すと、イルカは大人しくコップを手に取った。
 無防備に近くに寄って来た身体に、何もしないはずもなく、
「‥‥‥ちょ‥‥っ」
 繋がれた腕で、イルカの身体を囲った。こうすれば、イルカも縛れる。
「ねえ、イルカさん、慰めて?」
 笑みを貼り付けて囁いた。噛みつくようにゆっくりキスをすると、
「‥‥‥‥‥?」
 イルカの頬を何かが伝った。
 顔を離すと、頬に濡れた線ができている。その上を、また雫が滑り落ちた。
 幾つも。
 イルカは、腕の中で泣いていた。
 静かに。音もなく。
 オレは濡れた瞼に目を奪われ、
 自分の背に回ったイルカの手に、息を飲んだ。
 ――――抱きしめられている。
 理解した瞬間、訳の分からぬ衝動に駆られた。
 拘束するテープを破り、イルカの身体を引き寄せる。
 強く、強く身の内に。

 全部。
 全部、オレのものにできたらいいのに。










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2003.05.06

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