032:鍵穴
鍵がかかっていたようだけど、そんなものは関係ない。
入ると決めたら躊躇は無かった。
オレは、行きたい所へはどこでも行くし、欲しいものは我慢しない。
がらりと勢いよく開ければ、ごろん、と中の男が転がった。
ぽかん、と口を開けて見上げるのんきな顔が笑える。
予想通り、野暮ったいお人好しそうな顔だ。
隅っこに逃げる顔は恐怖に満ちていたけれど、十中八九、何をされるか理解してない。
木の葉の忍だろうとは思っていたが、見たとこ中忍か。
「はいはい、ちょっと大人しくしてよ」
引っ掴んで押し倒したら、鶏を絞めるような声を上げた。
コロサレルー! とつんざく悲鳴を上げるので、手っ取り早く口を封じた。
ふにゅ、と唇を押し付ければ―――ピタっと、男の抵抗が止む。
大きく見開いた目がぐるぐると混乱し、その隙をもちろん見逃すはずものない。
二人分の男の体重の受けて床が嫌な音を立てた。
お情け程度しか纏っていない服を握りしめ、イルカは唇を噛みしめる。
殺されると思ったのに、暗部の男が強要してきたのは伽の真似事だった。
強制的に女役にされ、まさぐる手に抵抗できない。
しかも、
(‥‥死ぬ‥‥っ)
戸惑っている間に、男は慣れた動作で愛撫を施してくる。
こんなこと許したわけじゃない。足を開かされて、男の肉で抉られるなんて。
上手く呼吸が出来ないのに、相手はそんなことはお構いなしだ。
大腿を押さえる手も容赦がなく、食い込んだ指が痛い。
噛みつくようなキスが降り、舌が入り込もうとする。
その舌に思い切り噛みついてやったが、相手は悪い笑みを浮かべただけだった。
「‥‥ぃ、あ‥‥ッ」
足を抱えられ、男は本格的な律動を始めた。
男なら誰でも知ってる単純な動き。擦って、擦られて―――。
(‥‥いや‥‥だ‥‥っ)
性交に使うべき場所じゃないのに。
説明のつかない刺激がピリピリと背に走った。きっと痛み。そして少しの快楽。
漏れる声を押さえようと顔を隠すと、
「‥顔、真っ赤。‥かわいいーね、アンタ」
からかう、息の乱れた声。
嫌だ。どうしてこんなことに。
扉には、鍵をかけてあったのに。
閉ざされた―――守られた空間だったのに。
足を抱える男の指に、より強い力が加えられた。
「‥‥‥や‥っ、‥‥‥‥ッ」
痛みを感じると同時に、ぶるり、と震えが伝わってくる。
内部に、熱く焼けるような飛沫を感じた。
中に出されたと分かって、視界がぼやける。泣きたくないのに。
覆い被さる男の重さに、イルカは喘ぐように呼吸を繰り返した。
男は間近から覗きこみ、
「ごめんね? ちょっと、がっついちゃった」
悪びれない笑顔を浮かべた。
汗が浮かぶイルカの額を優しく撫でて、
「次は一緒に気持ちよくなろう」
ちゅ、と口づけを落してくる。
勘違い。
大きな勘違い男だ。
イルカは脱力した。なんて男の懺悔を、今まで聞いていたのだろう。
でも、もう遅い。
―――鍵は破られた。
男は、
とうとう入ってきてしまったのだ。
○ BACK ○
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