039:オムライス









 ふんわりした卵にスプーンが突き刺さる。
 はふはふと、小さい口いっぱいに頬張る弟に、隣に座る姉はその口を拭いてやった。
 先程の洞窟内での出来事が夢のような光景。
 姉弟の前に用意されたオムライスはあたたかな湯気をのぼらせ、二人の心も温めてくれるだろう。
 賑やかな飲食店で、二人は何の違和感もなく溶け込んでいた。
「もうすぐ、君たちを保護する人間から来るから」
 イルカは二人に説明を繰り返した。
「君たちは山賊による被害者であることをしっかり説明するんだ。大丈夫。みんなちゃんと聞いてくれるから」
「―――何処行くの?」
 カタ、と立ち上がったイルカに、弟が顔を上げた。
 不安そうな目は、縋るようにイルカを見る。
「ごめんな。一緒にいてやりたいんだが。‥‥‥でも、一人は辛いからな」
「‥?」
 弟はイルカの言葉に首を傾げた。
 困っている姉と自分を助けてくれた男に、ずっと傍にいてもらいたかったが、
 姉の手がそっと弟の肩を抱いた。
「‥色々と、ありがとうございました」
 静かに頭を下げる姉に、弟も習った。
 姉は、イルカの言葉を理解したようだ。聞けばまだ16だと言うのに――あちらの世界の荒波を知っている。 
 イルカはその細い肩に手を置いて、大丈夫、と繰り返した。
 火影にはすでに話を通し、二人は保護する方向で処置は決定している。
 木の葉の里に残るか、故郷へ戻るか。
 どちらにしろ、もう大丈夫だ。
 弟の頬についたケチャップを指で取ってやると、くすぐったそうに笑った。
 そう、子供には笑顔が一番だ。










○ BACK ○

FC2 キャッシング 掲示板 無料アクセス解析
inserted by FC2 system