040:小指の爪









(あーあ、失敗しちゃった)

 土手に腰を下ろし、面を頭に上げたカカシは爪を噛んでいた。
 苛々する。
 任務にわざと失敗したのは初めてだ。
「いた」
 ガリ、と嫌な音がして、小指から血が出た。
 指先の力の具合が悪くなるのでやめようと思うのだが、つい噛んでしまう。
 ―――そういえば、最近噛まなくなっていたのに。
 なんでかね、と首をかしげ、少し不貞腐れる。

 噛まなくなったのは、あの男と会ってからだ。

 任務を放棄させるほど、あの男はいつの間にか自分の中に存在した。
 それを望んだのは自分だし、任務失敗の恥をかかされても――まだ好き。
 しかし、つまらない意地が苛立ちを膿む。
 やっと、丸くなる方法を見つけたような気がしたのに。
 どうして自分はこうなのか。
 足音がした。
 近づいてきた影を仰ぐと、

「‥爪なんか食べてないで、何か温かいものを食べましょう?」
 
 悪戯っ子を見つけたような困った顔で、男は笑った。
 ああ、やっぱり好き。
  









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