043:遠浅
「オレねえ、はたけカカシって言うの」
「‥‥‥」
突然の自己紹介に、イルカは呆気に取られた。
そうだ。まだ名前を言い合ってなかった‥‥。
「俺は、イルカです。アカデミーで教師をしています」
「そう。――イルカ先生ね。オレ、これからはアンタの家に行っていい?」
さらりと気になることを言われたが、イルカは動揺しなかった。
「‥‥お堂はもういいんですか?」
「ん。暗部はもう抜けるから、懺悔はしない」
「そうですか‥」
ずいぶん簡単に言う。けれど、この男は本当にやめるだろう。
「‥‥いいですよ」
自然と、嬉しさに笑みが浮かぶ。
彼と自分の距離は果てしなく広かったけれど、恐れることはない。
歩み寄ることは可能なのだ。
(俺って単純かなぁ‥?)
なんだか勢いのまま妙な関係になってしまったけれど、
――ひとりは辛いから。
(‥‥はたけカカシ)
名を心の中で噛み締めて、イルカはほっと息を吐く。
まだ笑みが消えずに苦労していると、覗き込んだカカシがにやりと笑った。
「ついでに、一緒に住んでいい?」
調子がいい。
「ダメです」
イルカはきっぱり断った。
ちえーっと不貞腐れる顔には、まだ悪い笑み。
なかなかてこずりそうな男だが、
(甘やかしちゃ駄目だよな)
―――共に歩いていくために。
またカカシの懺悔を聞くときがあるかも知れない。
鮮烈に緋色の地を駆け抜ける男の祈り。
本当は、
欲しいと言うならば、いくらでも許しを口にする。
死んで欲しくない。
生きていて欲しいから。
(‥‥なんで、よりによってこの人かなぁ‥‥‥)
自分の恋愛観念に疑問を抱かずにはいられない。
住みたい、住みたい、と駄々をこねるカカシに、イルカは大きなため息をついた。
END
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