074:合法ドラッグ









「どうだ、カカシ。効いただろ」
 寝惚けた頭に仲間の声が響いた。
 欠伸を噛み殺し、カカシは「まあね」と返事をする。
「そうだろう。ただ、あんまり服用するなよ。お前にぐっすり眠られちゃ、俺たちの寿命が縮む」
 頼りにしてんだ、と言い残し、仲間は簡易テントへと戻っていった。
(‥頼りにされちゃってもねー)
 部隊の中で一番強いのは自分だと分かっているが――こっちも人間だ。
 夢路の森。
 樹齢千年を越える大木が並ぶ巨大な森林を訪れてから一ヶ月。野営には慣れてるが、人の手があまり加えられていないこの森は、思いのほか過ごしにくかった。
 異様に成長した動植物に加え、夜は寒く迷いやすい。最近はないが、当初は仲間の何人かが迷い、探索に無駄な時間を使った。
 森には凶暴な肉食獣がいる上に、運が悪ければ敵とはちあわせになる。
 木の葉の忍がこの森に入り込んでいることはあくまで極秘だ。
 神経を張り詰める日が続き、全員の疲労は増していく。カカシはとくに部隊の要として頼られ、タフな体にもいいかげん限界がきていた。
 せめて数時間まとまった眠りを、と仲間のひとりから睡眠薬をもらい、やっとまともな眠りを得たが‥、
(変な夢だった)
 薬なんて使ったせいか、妙にリアルな夢だった。
 あの男の名前はなんと言ったか。―――うみの、イルカ?
 ぼんやり思い浮かべると、優しい笑顔が頭の中に現れた。
(‥‥知らないよなぁ)
 木の葉の忍だったが、会ったことはない。どの記憶が混乱してあの男を作ったのか。
 それにしては、本当に生きているようだった。
「‥‥‥しかし、三途の川ねぇ」
 なんとも縁起が悪い夢だ。まだあんな所には用はないのに。
 あんな夢を見るならば、もう薬を使うのはやめよう。
 だが、
(‥イルカ先生だっけ)
 同じ夢を見る確率は低いけれど、もしかしてまた会えるかも。
 見知らぬ青年と隣り合わせに座った時間を、カカシは思いのほか気に入っていた。もう一度会えるなら、縁起の悪い夢くらいどうってことはない。
 所詮は、夢。
 そう思った瞬間、
「‥‥‥っ」
 突然、甲高い鳥の声が森に響いた。
 一ヶ月ほどしか滞在していないが、聞いたことのない鳥の声だ。
 振り仰いで姿を探したが、影ひとつ見当たらない。
「‥‥‥」

 ―――嫌な森だ。

 カカシは今回の任務に、確実に嫌気がさしていた。











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