079:INSOMNIA
眠れない。
この間の左腕の傷はずいぶん良くなったが、どうも落ちつかない。
薬に頼ろうかと思ったが、傷の治りが遅くなるのはまずい。
身体の左側がずきずきと痛み、苛立つ。
思い出すのは――夢の人。
(あの人はなんというか、不思議なんだよねぇ)
イルカのことを考えている時だけ、少し気分が軽くなった。
こんな風に浮き立つ心を知らない。
たとえ縁起の悪い場所でもいいから、イルカに会いたいと思う。
「カカシ、決まったぞ」
仲間の一人が報告に来た。
テントで横になるカカシはミーティングに参加しなかった。内容を詳しく聞くと、
「明後日に決行だ」
麝香獣の一味が潜伏する砦を落とす計画が決定したようだ。
自分としてはもう少しだらだらしていたいが、やるからにはさっさと片付けたい。
忌みべき”麝香獣”
このブローカーのおかげで自分たちは長く里を離れる羽目になったのだ。
木の葉の里だけでない、他の国々の里もこの麝香獣には手を焼いている。不当な取引によって流通が狂い、まっとうな商売人たちは多大な損害を受け、時に忍びの任務にすら彼らの手は入り込んでくる。
最初は三流詐欺師たちの集まりだった麝香獣が、今では力をつけすぎた。表向きには正規の商団すら持ち、その山を切り崩すのは難しい。
今回のカカシたちの任務は、麝香獣の不正取引の証拠を掴み、あわよくば黒幕の首根っこを掴むことだが、
(――もしくは捻り殺す)
さんざん人を振り回してくれた黒幕と対峙して、はたして手加減できるのか、するつもりがあるのか、当のカカシは至極いい加減だった。
その日から、決行の準備が始まった。
慌しい空気に、カカシはため息を押し殺す。
ああ、これでまたしばらく眠れない。
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