082:プラスチック爆弾









 地下道の階段付近に仕掛けられていた爆弾が破裂した。
 爆発は砦を揺るがし、破壊こそしなかったが、内部は見るも無残な状態となった。
 自分たちが雇った仲間すら巻き込んで、麝香獣の幹部は逃げた。まんまと。
 入り込んだ部隊も負傷し、無害な労働者たちも傷ついた。
 次々に怪我人が運び出される様子を遠くから見ながら、イルカは臍をかんだ。
 あと一歩の所で逃してしまった。
 麝香獣も、せっかく補給した砦を放棄することになり予想外の痛手となっただろうが、それによる犠牲は大きい。
 負傷者の中に木の葉の暗部の姿を見て、イルカはぎゅっと心臓が握られた気分になる。
 あの子が熱心に学んだのは、城砦防術だけでなく爆弾に関してもずばぬけて成績が良かった。爆弾が仕掛けられているだろうと最初から予感していた。
(‥怪我人なんて、出ない道もあったのに)
 自分が彼らに進言していれば、もっと注意深く行動していただろう。
 抜け忍である自分の立場を知られるのはまずい。――保身のために、自分は言わなかった。
 それでも、地下道へ向かおうとする彼らを見過ごすことが出来ず、先陣に制止の声をかけた。最悪、死者は出なかったようだが、負傷者が出れば同じことだ。
 無傷の己の身体を見下ろし、イルカは唇を噛んだ。
 彼らは、木の葉のどこの部隊だろうか。
 手当ての手伝いをしたい。一般人だっている。
「――――」
 横たわり、手当てを受ける人間の中に銀色の髪を見たようで、大きく胸が跳ねた。
 反射的に目を逸らしたのは何故か。
 あの人かも知れない。だが、怖くて確認できない。 
 ――きっと、迷いを生む。
(‥‥ここには、いない。絶対にいない)
 言い聞かすように己を説き伏せ、イルカは静かに集団から離れ、その場を後にした。
 踏み出す足は、里を抜けたよりも更に重くなっていた。










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