098:墓碑銘









 麝香獣は、事実上壊滅した。
 表の顔である琵琶花は、その後も変わらず運営は続いている。
 支配する人間たちが一変したことによって、その賄いは真っ当なものとなった。
 違法な取引により、上層部の人間は捕えられ、社長の座にいた男もあっけなくお縄についた。それらは、すべて木の葉の里の手柄となった。
 カカシはフヨウから聞いた情報屋を探し出し、証拠となる情報をいくつも掴んだ。
 フヨウは元から、こうなることを予期して、情報屋に深奥な秘密をいくつも漏らしていた。
 金さえ払えば、情報屋はそれを売る仕事だ。
 多少の脅しも交えつつ、木の葉の里は麝香獣を押さえる縄を手に入れ、遠征に当たっていたカカシたちもまた、任務を終えて里へ帰還することとなった。
 里に戻ったカカシがまずしたことは、イルカの弁護だった。
 三代目火影は信用に当たる人物で、イルカに関してもまた、子供の頃から知っていた。イルカの人の良さを心得ていた火影は、カカシの言い分を聞き、一部納得した。
 同胞を殺めたフヨウを許すわけにはいかないが、イルカに関しては、戻ってきた時、抜け忍として処罰するのではなく、遠征から戻った者として受け入れると。
 イルカはこの処罰に反論するだろうが、イルカが戻ってくる場所を用意できたことは、カカシにとって救いだった。
 それぐらいはさせて欲しい。自分のために。


 最後にイルカを見てから、もう半年。
 夜、ふらりと立ち寄った慰霊碑の前で、カカシはぼんやり立ち尽くした。
 慰霊碑に、まだイルカの名はない。だが、これ以上不在が続けば、彫られてしまうかもしれない。
 生きているのか、死んでいるのか。
 名無し鳥がいない今、三途の川の夢を見ることはない。だから、彼がそこにいても確かめようがない。自分にできるのは、ただ信じることだけだ。
 イルカが、約束を守ってくれることを。
(‥‥今度こそ、ね)
 もうすっぽかしはごめんだよ、とカカシは心の内でつぶやいた。
 しばらくは胸が痛む。任務の忙しさに身をおいて、忘れよう。
 寂しいが大丈夫。
 いつか会えると、信じているから。
 ただ少し、川を見ると心配になる。
 あんたの姿を探してしまうオレを、早く怒りに来て下さい。
 イルカ先生。









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2004.05.17

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